お役立ちコラム
処遇改善手当とは?もらえる人や条件、もらえないケースを解説
介護職員処遇改善手当は、介護職員の給料アップのために設けられた手当です。魅力的な制度ですが、すべての施設でこの手当を支給しているわけではないので注意が必要です。
この記事では、介護職員処遇改善手当をもらえる条件や、手当を支給する施設・支給しない施設の特徴について解説します。
介護職員処遇改善手当の制度とは
介護職員処遇改善手当とは、「処遇改善加算の条件」に該当する施設が、職員に対して支払う手当のことです。処遇改善加算とは、職場環境やキャリアパスの改善を行った施設に、職員の給料をあげるためのお金が支給される制度のこと。施設は、支給されたお金を給料に上乗せして職員に支払います。
処遇改善手当が生まれた背景
制度が創設された背景には、「介護業界の人手不足を解消したい」という厚生労働省の狙いがあります。そのために課題となっていたのは、職員の給料が低いことでした。そこで、給料をアップして働きやすい環境を整えるべく処遇改善手当が誕生しました。
処遇改善加算制度の変遷
2009年に前身となる「介護職員処遇改善交付金」が実施されました。この制度では、施設に支給するお金の100%が公金でした。2012年に「介護職員処遇改善加算」に移行し、90%が公金、残り10%が介護利用者の負担によってまかなわれるようになりました。
介護職員処遇改善手当をもらえる条件
介護職員処遇手当の支給対象は、ほぼすべての介護職員です。雇用形態(正社員・パート社員)や取得資格に関係なく支給されます。
ただし、以下の場合は支給されません。
- 「処遇改善加算の条件」に該当しない施設で働いている
- 施設の方針で「支給しない対象者」が決まっている
- 対象外の職種に従事している
「処遇改善加算の条件」に該当しない施設で働いている
介護施設の中には、処遇改善加算制度の条件に当てはまらない施設もあります。
ちなみに、厚生労働省の「令和4年度介護従事者処遇状況等調査(P9)」によると、処遇改善加算の届け出をしていない施設は全体の5.5%です。
また、訪問看護や訪問リハビリテーションは支給の対象外となります。
施設の方針で「支給しない対象者」が決まっている
処遇改善加算の条件に該当していても、施設の方針で「支給する対象者」「支給しない対象者」が定められているケースがあります。
処遇改善手当を誰にいくら支給するかは、各施設の経営者に委ねられています。経験年数の多いベテラン職員に優先して支給する方針の場合、ほかの職員には手当が支給されない(または少ない)こともあります。
対象外の職種に従事している
介護職員処遇手当は、介護に直接関わる職員が支給の対象です。以下の職種は対象外となります。
- ケアマネージャー
- サービス提供責任者
- 看護師
- 理学療法士
- 作業療法士
- 生活相談員
- 事務員
- 栄養士 など
ただし、介護職を兼務している場合は支給の対象になることもあります。
介護職員処遇改善手当の支給方法
介護職員処遇改善手当の支給方法は、各施設ごとに異なります。例えば以下のような支給方法があります。
- 毎月の給料に上乗せ
- ボーナスに上乗せ
- 毎月の給料に上乗せして、支給するお金が余った場合にはボーナスに上乗せ
- 定期昇給部分に充当
- 手当部分に充当
厚生労働省の「令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要(P11)」によると、給与などの引き上げの実施方法については「各種手当の引き上げまたは新設(予定)」が72.0%、「定期昇給を実施(予定)」が51.5%となっています。
介護職員処遇改善手当はいくらもらえる?
介護職員処遇改善手当がいくらもらえるかは、施設によって異なります。勤続年数やスキルによって決定される場合もあるので、一概には言えません。
施設が国から支給される処遇改善加算額
職員個人がもらえる金額に明確な決まりはありませんが、施設が国から処遇改善手当のためのお金がいくらもらえるかは定められています。
施設はキャリアパス・職場環境の条件を満たすことで、処遇改善加算Ⅰ・Ⅱ・Ⅲに分けられ、介護職員一人につき以下の金額が加算されます。
【介護職員一人当たりの加算額の目安】
- 処遇改善加算(Ⅰ):月額3.7万円相当
- 処遇改善加算(Ⅱ):月額2.7万円相当
- 処遇改善加算(Ⅲ):月額1.5万円相当
国が定める「キャリアパス」と「職場環境」改善の大まかな内容は以下の通りです。
【キャリアパス改善の例】
- 職位や職務内容に応じた任用要件と賃金体系を整備
- 研修の機会をつくる
- 経験や資格に応じて昇給する仕組みを作る
【職場環境改善の例】
- キャリアアップに向けた取り組み(研修・メンター制度の実施など)
- 多様な働き方の推進(休業制度の充実・事業内託児施設の整備など)
- 心身の健康管理(健康診断の実施・介護ロボット導入など)
処遇改善加算が中抜きされることはある?
介護職員処遇改善手当の中抜きはできない仕組みになっています。なぜなら「支給された処遇改善手当のためのお金は、必ず職員の処遇改善に充てること」と決まっているからです。
施設は手当のためのお金を支給されるとき、どのような使い道にするかの計画書を各都道府県に提出します。支給されたお金は全て使いきる必要があり、すべて職員の処遇改善のために使われます。
介護職員処遇改善手当を支給する施設・支給しない施設の特徴
「令和4年度介護従事者処遇状況等調査(P9)」によると、介護職員処遇改善加算を取得する施設は94.5%です。ほぼすべての施設が職員に処遇改善手当を支給していることになります。
各施設における、介護職員処遇改善加算の取得状況は以下の通りです。
【介護職員処遇改善加算の取得状況】
- 介護老人福祉施設 99.3%
- 介護老人保健施設 97.4%
- 介護療養型医療施設 63.1%
- 介護医療院 85.0%
- 訪問介護 92.7%
- 通所介護 95.5%
- 通所リハビリテーション 77.0%
- 特定施設入居者生活介護 98.7%
- 小規模多機能型居宅介護 99.1%
- 認知症対応型共同生活介護 99.3%
処遇改善手当を支給する施設の特徴
介護職員処遇改善加算の取得状況によると、特に以下の施設は処遇改善手当の支給に力を入れる傾向があることがわかります。
- 介護老人福祉施設
- 介護老人保健施設
- 特定施設入居者生活介護
- 小規模多機能型居宅介護
- 認知症対応型共同生活介護
ただし、前述したように介護職員全員に手当を支給するわけではありません。経営者の方針によっては、経験年数やスキルを考慮した結果、ベテラン以外には支給しないケースもあります。
処遇改善手当を支給しない施設の特徴
介護職員処遇改善加算の取得状況によると、「介護療養型医療施設」は処遇改善手当の支給に消極的な傾向があることがわかります。
また、小規模な施設も処遇改善手当の支給に消極的です。
なぜなら、介護職員処遇改善加算を取得するためには、煩雑な手続きをする必要があるからです。
具体的には「賃金改善の仕組みを設けるための事務作業」と「計画書や実績報告書の作成」が大変であるため、取得しないことを選ぶ施設もあります。
転職などにおいて給料アップとキャリアアップを軸に置いている場合は、施設選びの際に注意して確認することをおすすめします。
まとめ
介護職員処遇改善手当とは、職員の給料やボーナスなどに反映される手当です。9割以上の施設が手当を支給していますが、なかには今回ご紹介したように手当のない施設もありますので働く場所を選ぶ時には、施設情報をチェックしておくようにしましょう。
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